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危ないシリーズ その9 「こはく、ピンチ!」 [実話ではないですが]

あれから数日後。

「師長さん!朗報です!」
小児科ナース瑠璃子が興奮状態で小児科病棟師長室に入ってきた。

「一体何なの?」師長が問う。
「知り合いから聞いた話でまだ詳細は明かされていないのですが・・・」

瑠璃子が言うには、こはくの卒業した医療短大が
何年か前、カリキュラムの変更をした結果
看護師の国家試験を受験するのに必要な単位を取ることができないまま
国家試験を受験させた疑いがあるとのことだった。

「つまり・・・?」
「つまり、こはくは国家試験を受験する資格がなかったかも知れないんです。
だから当然、看護師の資格も取れていないことに・・・」
「本当なの?だとしたら・・・」
「当然、クビでは?」

師長と瑠璃子は手を取り合って喜んだ。

「あの学校の実習生には頭に来ていたんですよ。
全然実技が出来ないだけじゃなく口だけは達者で文句付けてくるんだから!」
と瑠璃子が言えば、師長も忌々しい事件を思い出した。

この病院では付属の看護学校とこはくの卒業した医療短大から
実習生を受け入れていたが
付属の学生はきちんと言うことを聞いて一所懸命やるのに
こはくの学校は何もやらず、だらだらしていて
口答えばっかりの学生が多かった。

一度やってきた医療短大の小児看護学の教授とやらに文句を言ったところ
「うちの学生は保健師や助産師の学校に進学する人が多いから
そういった進路指導の方に力を入れざるを得ないんですよ!
学校内で実技はそんなにやらせる時間もないんで!」
と、怒鳴られ
頭に来た師長が
「でしたらうちでも受け入れを拒否したいんですけど!」
と、つい言ってしまい
それが看護部長に伝わって、こっぴどく叱られたのだった。

「何が進路指導だ、自分の学校のカリキュラムもちゃんとできていないで!」
「これで、こはくもクビ、実習生も来られなくなるかもですよ!」

そんなこんなで前々からあの学校は気にくわなかったが、この一件で一気に解決しそうだ、と
瑠璃子も師長も安堵したのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんなことは知らない、こはくは、その時、病院のロビーを歩いていた。

すると、前からシズさんとツネさんの双子姉妹がやってきた。

「あら、あなたは外来の看護師さんね?」とシズさん。
「あ、いや、あの日は助っ人で。いつもは小児科病棟の方なんですよ」
・・・とこはくは言いつつ、シスさんと書いてしまった一件を思い出し内心、悶絶していた。

「ふふふ、いろいろ怒られていたので覚えているのですよ」とツネさん。
「いや、あの、、、、すいません・・・」
二人には気付かれていないとはいえ、自分のやってしまったことが頭をぐるぐるして
つい謝ってしまった。

「怒られて頑張って向上するものですよ、人間は」
「そうそう、最初っから完璧な人なんていませんよ。
いたら、それはもう伸び代がないってことですしね」

上品な双子さんに言われて、こはくはますます恐縮した。

「ねえ、あなた、私たちの名前の由来ご存じ?」
「・・・?」

「うふふ。生まれたとき、二人で騒々しく大泣きしていたから
常に静かにしていろ!だから「ツネ」と「シズ」ですって!失礼でしょ?」

「そんな・・・こんなに上品なのに、ですか?」
と、こはくは目をぱちくり。

「いえいえ、ずうっと騒々しかったんですよ、今も。二人とも声も大きくてね」
「それでも外では静かにしていられるようになったんですよ」
「あなたも、頑張っていいナースになってくださいな。あなたならきっとなれますよ」

こはくは、もう、その時はわんわん泣いていた。
(よし!これから私は頑張って誰からも信頼されるいいナースになるぞ!!)

そう決心したのだったが・・・・・・・・・・・・・・・


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